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イオン液体を浸漬させたムラサキツユクサ葉裏のSEM-EDS分析
イオン液体を用いた浸漬処理技術は、含水状態の試料をSEM観察するための前処理方法として注目されています。適切な条件で浸漬処理された含水試料は、高分解能SEM観察およびEDS元素分析が可能となります。
以下に、ムラサキツユクサ葉の裏面表皮組織を電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)にて、測定を試みた分析事例を紹介します。
裏面表皮組織を光学顕微鏡観察すると、気孔(孔返細胞)および針状のシュウ酸カルシウム結晶(CaC2O4)が観察されます。EDS元素分析を行うと、シュウ酸カルシウムの結晶部からはCaが強く検出されたことが分かります。このように、含水試料についてもEDS元素分析が行えますが、検出されたC、O、Sについては、イオン液体の構成元素であるため、解釈には注意が必要です。
図1:試料の光学顕微鏡写真
図2:シュウ酸カルシウムと孔返細胞のEDSスペクトル
植物構成元素 | C、O、K |
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ガラス板 | Si、O |
シュウ酸カルシウム | C、O、Ca |
イオン液体構成元素 | C、O、S |