AN1319
昇温脱離ガス質量分析法
TDS-MS:Thermal Desorption Spectroscopy - Mass Spectrometry
1. 特 徴
- 試料から脱離するガス分子と発生温度、圧力との関係を知ることが可能です。
- 試料だけの加熱ができるため、バックグランドが低く、水素、水、酸素、窒素などの低質量分子の高感度分析(約1×10E13個分子・cm2レベル)が可能です。
- 試料からの発生ガス、脱離分子の成分推定及び定量(分子の数)分析が可能です。
2. 原理、概略図
1×10-7Pa以下の超高真空内で試料を加熱し、脱着したガス成分は電子衝撃法でイオン化されます。
生成したイオンは四重極電極の中を通過し、電極に印加する高周波電圧を変化させて得られる固有のm/zから水や水素などを定量します。
写真:装置写真 | 図:装置の概略図 |
3. 仕様と性能
測定質量数 | m/z =1〜200a.m.u |
---|---|
分解能 | M/ΔM ≧ M |
加熱温度 | 1,200℃(標準) 1,400℃(MAX) |
トランスファーベッセル対応(大気フリー測定が可能)
4. 試料の形状、サイズ
試料サイズ | 15mm×15mm×5mm(最大) |
---|
5. 分析依頼時の留意点
- 有機物で汚染された試料は不可
- ハロゲン原子(特にフッ素)が多く発生する試料は不可
- 超微量分析であるため、試料の取り扱いは注意する
6. 測定データ例
1) SCAN(定性)スペクトル
横軸は質量数(m/z)、縦軸は強度、斜めの軸は温度(℃)を示します。
2) MID(定量)スペクトル
水素(m/z = 2)、水(m/z = 18)の定量を行っています。横軸は温度(℃)を示します。
7. 適用例
- 積層間絶縁膜の水分管理
- H2の脱離
- ドライエッチングの残渣確認